【2026年4月努力義務化】治療と就業の両立支援の進め方

従業員から相談があったとき、企業はどう対応すべきか

2026年4月より、労働施策総合推進法の改正に伴い、「治療と就業の両立支援」に向けた環境整備が企業の努力義務となります。

医療技術の進歩により、病気の治療を受けながら働き続けることは、以前よりも現実的な選択肢になってきました。一方で、従業員の中には「会社に迷惑をかけたくない」「このまま働き続けられるのだろうか」と不安を抱え、十分に相談できないまま離職を選んでしまう方もいます。

こうした離職を防ぐためには、従業員から相談や申出があったときに、会社がどのように受け止め、どのような流れで支援を進めるのかを整理しておくことが大切です。

本人の意向を尊重しながら、主治医や産業医等とも連携し、無理のない働き方を一緒に考えていきましょう。

本記事では、治療と仕事の両立支援を進める際の基本的な流れを解説します。


1. 従業員からの相談・申出がスタート

両立支援は、従業員本人からの相談や申出を受けるところから始まります。

たとえば、健康診断や体調不良をきっかけに医療機関を受診し、主治医から治療と仕事の両立について助言を受けた場合などに、従業員が会社へ支援を申し出ることが考えられます。

このとき大切なのは、従業員が「相談しても大丈夫」と感じられる環境を整えておくことです。相談窓口や手続きの流れをあらかじめ明確にしておけば、従業員も早い段階で相談しやすくなるでしょう。

また、主治医から就業に関する意見を得る際には、勤務情報提供書や両立支援カードなどを活用すると、業務内容や勤務状況を整理して伝えやすくなります。

会社側が一方的に判断するのではなく、従業員本人と話し合いながら、必要な情報を確認していくことがポイントです。


2. 主治医・産業医等との情報連携

両立支援を進めるうえでは、主治医から治療状況や就業上の配慮に関する意見を確認することが欠かせません。

主治医の意見を得る方法としては、主に次の2つがあります。

① 勤務情報提供書を作成し、主治医意見書を取得する方法
② 両立支援カードを活用し、従業員本人を通じて主治医と情報連携する方法

いずれの場合も、従業員本人の同意を前提に進めることが重要です。健康情報は非常に機微な個人情報にあたるため、関係者間で共有する内容は、就業上の措置や配慮に必要な範囲にとどめましょう。

産業医等がいる場合は、主治医の意見を踏まえたうえで、職場の実情に即した助言を受けることができます。治療の専門家である主治医と、職場環境を理解している産業医等の意見を組み合わせることで、より現実的な対応を検討しやすくなるでしょう。

産業医がいない企業でも、必要に応じて地域産業保健センターなどの外部資源を活用する方法があります。社内だけで抱え込まず、専門機関の力を借りることも選択肢の一つです。


3. 両立支援プラン・職場復帰支援プランの作成

主治医や産業医等の意見を踏まえ、会社は従業員が治療を受けながら就業を継続できるかを検討します。

就業継続が可能と考えられる場合は、必要に応じて「両立支援プラン」を作成しましょう。

プランには、通院予定、勤務時間や業務内容の調整、治療に対する配慮、実施期間、フォローアップの方法などを整理します。あらかじめ内容を見える化しておくことで、本人・上司・人事労務担当者の間で認識のずれが生じにくくなります。

一方で、入院や療養により休業が必要な場合もあります。その際は、休業制度や傷病手当金、社内手続き、復職までの流れを事前に説明しておくと、従業員の不安を軽減できるでしょう。

復職時には、必要に応じて「職場復帰支援プラン」を作成します。長期間休業していた場合には、短時間勤務や試し出勤などを活用し、段階的に通常勤務へ戻していく方法も有効です。

病気になったからといって、すぐに就業を制限するのではなく、医師の意見を踏まえながら、配置転換や勤務時間の調整など、できる範囲の対応を検討していきましょう。


4. 支援開始後のフォローアップも重要

両立支援は、プランを作成したら終わりではありません。

治療の経過や体調の変化によって、必要な配慮や働き方は変わっていきます。そのため、定期的な面談や連絡を通じて従業員の状況を確認し、必要に応じてプランを見直すことが大切です。

たとえば、通院頻度が変わった、体調に波がある、業務量の調整が必要になったといった場合には、その都度、本人と話し合いながら対応を検討しましょう。

また、業務調整によって周囲の上司や同僚に一時的な負担が生じることもあります。その場合も、本人の同意を得たうえで、必要最小限の情報を共有し、職場全体で過度な負担が生じないように配慮することが求められます。

本人だけでなく、職場全体が無理なく支援を続けられる仕組みを整えることが、長期的な両立支援につながります。


まとめ

治療と就業の両立支援は、従業員本人の健康や生活を守るだけでなく、企業にとっても大切な人材の離職を防ぐ重要な取り組みです。

従業員から相談や申出があった際に慌てないためには、相談窓口の明確化、基本方針の周知、社内制度の整備、主治医や産業医等との連携方法の確認を、あらかじめ進めておくことが大切です。

まずは、「治療と仕事の両立を支援する」という会社の姿勢を示し、従業員が安心して相談できる環境づくりから始めてみませんか。

社内制度の設計や就業規則の見直し、両立支援に関する社内ルールの整備などについてお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。