2026年4月1日より、労働施策総合推進法の改正に伴い、「治療と就業の両立支援」に向けた環境整備を行うことが
企業の努力義務となります。
医療技術の進歩により「治療しながら働き続ける」ことが現実的になった今、病気を抱える従業員への対応は特別なケースではなく、日常的な労務課題です。本記事では、制度改正の背景と、貴重な人材の離職を防ぐために企業が取り組むべき具体的なステップを解説します。
1. なぜ今、「両立支援」の努力義務化なのか?
現在、通院しながら働く人は就業者の約4割(2022年時点)に達しており、労働力人口の高齢化に伴い、
今後もさらに増加すると見込まれています。
ここで企業が知っておくべき衝撃的なデータがあります。
それは、「病気を理由に退職した人の4人に1人は、最初の治療が始まる前(診断確定時など)に退職している」という事実です。
「会社に迷惑をかけられない」「両立できるか不安だ」と思い詰めて辞めてしまうのを防ぐためには、治療が本格化する前段階からの相談窓口や支援体制の整備が急務となります。
2.企業に求められる「5つの環境整備」
今回の指針では、企業が取り組むべき環境整備として以下の5つが示されています。
いきなり全てを完璧にするのではなく、できるところから着手することが大切です。

① 基本方針の表明と周知
「会社として治療と仕事の両立を支援する」というトップのメッセージや社内ルールを発信し、申出をしやすい風土を作ります。
② 研修などによる意識啓発
管理職や同僚の理解が不可欠です。外部セミナーの活用や社内での周知を行います。
③ 相談窓口の設置
既存のメンタルヘルス窓口や、人事総務、産業医などを窓口として明確化し、個人情報が守られることを周知します。
④ 柔軟な働き方を支える制度づくり
時間単位の年次有給休暇、時差出勤、短時間勤務、テレワークなど、通院や体調に合わせた勤務制度を整えます。
⑤ 社内外の連携体制の構築
産業医や主治医、そして外部の専門機関と連携し、安易な「就業禁止」ではなく、配置転換等を含めた柔軟な個別対応を検討します。

3.スムーズな連携の鍵「両立支援コーディネーター」とは
両立支援を進める際、労務担当者が「医療の専門的なことが分からず、
主治医とどう連携すればいいか分からない」と悩むケースは少なくありません。
そこで活躍するのが「両立支援コーディネーター」です。
従業員(患者)、医療機関、企業の3者の間に立ち、橋渡し役として情報共有や調整をサポートする専門人材です。
医療機関(医療ソーシャルワーカー等)に配置されているほか、企業の労務担当者自身が研修を受けて社内コーディネーターとなる道もあります。また、当事務所のような社会保険労務士などの外部専門家がその役割を担うことで、客観的なアドバイスや、両立支援に関する助成金の活用サポートを行うことも可能です。
まとめ
「治療と就業の両立支援」は、従業員本人の健康と生活を守るだけでなく、
企業にとっても経験豊かな人材の流出(健康離職)を防ぐ重要な経営課題です。
従業員からの申出があった際に慌てないよう、まずは「相談窓口の明確化」や「基本方針の周知」から始めてみませんか?
社内制度の設計や就業規則の見直しなどについてお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

