2026年度の地域別最低賃金について、47都道府県の地方最低賃金審議会の答申が出そろい、答申された改定額の全国加重平均は1,177円となりました。
最低賃金の改定にあたっては、時給額の見直しだけでなく、月給制の従業員の賃金や、各種手当の取扱いについても確認しておくことが大切です。
また、改定後の最低賃金が適用される日は、都道府県によって異なります。自社の事業場に適用される金額と発効日を確認し、
給与計算や従業員への案内を進めておく必要があります。
本記事では、2026年度の最低賃金改定の概要と、企業として確認しておきたい実務上のポイントについて整理します。
※掲載内容は、2026年9月26日に確認した公表資料をもとに作成しています。答申額や発効予定日については、
各都道府県労働局が公表する最新情報をご確認ください。
1. 2026年度の最低賃金改定について
厚生労働省の答申状況によると、改定額の全国加重平均は、前年度の1,121円から56円引き上げられ、1,177円となりました。
都道府県別の引上げ額は54円から65円で、答申された改定額の最高額は東京都の1,280円、最低額は宮崎県の1,085円です。
ここで注意したいのは、全国加重平均の1,177円が、すべての企業に共通して適用される金額ではないという点です。
企業は、事業場が所在する都道府県の最低賃金額を確認する必要があります。
複数の都道府県に事業場がある場合は、それぞれの地域について確認しておくことが大切です。
また、答申資料に記載された発効日は予定であり、変更される可能性があります。給与計算の準備にあたっては、各労働局の公示内容を確認しましょう。
2. 最低賃金の対象となる従業員と賃金
最低賃金は、正社員だけでなく、パート・アルバイトなどにも適用されます。
企業と従業員が合意していた場合でも、最低賃金を下回る賃金の定めは、その部分が無効となり、最低賃金額と同額の定めをしたものとされます。
地域別最低賃金を下回る賃金しか支払っていない場合には、差額の支払いが必要となるほか、50万円以下の罰金の対象となることもあります。
確認にあたっては、給与明細の総支給額をそのまま比較するのではなく、最低賃金の計算対象となる賃金を整理する必要があります。
対象となるのは、基本給など毎月支払われる基本的な賃金ですが、次の賃金は計算から除外します。
・慶弔手当など、臨時に支払われる賃金
・賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
・所定労働時間を超える労働に対して支払われる賃金
・所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金
・深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の賃金を超える割増部分
・精皆勤手当、通勤手当、家族手当
手当が計算対象となるかどうかは、名称だけでなく、支給の実態を踏まえて確認することが大切です。
3. 月給制の従業員も確認が必要です
最低賃金の確認は、時給制の従業員だけを対象に行えばよいものではありません。
月給制や日給制の場合も、対象となる賃金を1時間あたりの金額に換算し、適用される最低賃金額と比較します。
主な計算方法は、次のとおりです。
時給制:対象となる時給額
日給制:対象となる日給額 ÷ 1日の所定労働時間
月給制:対象となる月給額 ÷ 1か月平均所定労働時間
歩合給制:賃金算定期間の歩合給総額 ÷ その歩合給に係る総労働時間
月給制では、通勤手当などの除外項目を差し引いたうえで計算することが重要です。
また、基本給と手当で給与の形態が異なる場合などは、それぞれを時間額に換算し、合計額で確認します。
給与額とあわせて、計算に使用する所定労働時間が適切かどうかも確認しておくと安心です。
判断に迷う場合は、労働局や労働基準監督署、社会保険労務士へ相談することをおすすめします。

4. 最低賃金の減額には許可が必要です
最低賃金には、一定の場合に、都道府県労働局長の許可を受けて減額の特例を適用する制度があります。
対象には、精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方、試の使用期間中の方、一定の認定職業訓練を受ける方、
軽易な業務や断続的労働に従事する方などが含まれます。
ただし、対象に該当するだけで、自動的に最低賃金を下回る賃金が認められるわけではありません。
例えば、「試用期間中だから」という理由だけで、企業の判断により最低賃金を下回る賃金を設定することはできません。
それぞれの許可基準を満たし、必要な許可を受けることが前提となります。
減額の特例を検討する場合は、事前に管轄の労働基準監督署へ相談し、対象要件や手続きを確認しておきましょう。
5. 改定に向けて企業が準備しておきたいこと
まずは、従業員ごとの賃金を確認し、改定後の最低賃金を下回る方がいないかを整理することが大切です。
見直しが必要な場合は、発効日から適切な賃金を支払えるよう、変更内容と給与計算への反映時期を確認しておきましょう。
賃金額を変更する際は、賃金改定通知書などにより、変更後の金額と適用開始日を従業員へ分かりやすく伝えておくと安心です。
また、最低賃金の引上げに伴う人件費の増加についても、あらかじめ試算しておくことをおすすめします。
賃金そのものの増加に加え、労働保険料や社会保険料への影響も見込んでおくと、今後の事業運営を検討しやすくなります。
必要に応じて、賃上げや生産性向上に関する支援制度を確認することも一つの方法です。
厚生労働省では、業務改善助成金など、中小企業・小規模事業者の賃上げに向けた支援策を案内しています。
利用を検討する場合は、申請要件や受付期間、取組を実施する時期などを確認しておきましょう。
6. まとめ
2026年度の地域別最低賃金は、答申された改定額の全国加重平均が1,177円となりました。
企業は、全国平均の金額だけで判断するのではなく、自社の事業場に適用される最低賃金額と発効日を確認することが重要です。
また、時給制の従業員だけでなく、月給制や日給制の従業員についても、対象となる賃金を時間額に換算して確認する必要があります。
賃金の見直し、給与計算への反映、従業員への説明、人件費の試算などを早めに進め、改定に対応できるよう準備しておきましょう。
対象となる手当や計算方法について判断に迷う場合は、労働局、労働基準監督署、社会保険労務士などへ相談することをおすすめします。
社内制度の設計や就業規則の見直し、社内ルールの整備などについてお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

