5月・6月から始めたい、職場の熱中症対策
2026年夏季は、全国的に平均気温が平年より高くなる見込みとされており、猛暑日や酷暑日への早期の備えが重要です。
特に、身体が暑さに慣れていない5月・6月は、気温が真夏ほど高くなくても熱中症のリスクが高まる時期です。
また、2025年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、一定の暑熱環境下で行われる作業について、
事業者には熱中症対策として「報告体制の整備」「対応手順の作成」「関係者への周知」が義務付けられています。
対象となるのは、WBGT値28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。
本記事では、職場の熱中症対策として重要な「暑熱順化」の進め方と、労務担当者・安全衛生担当者が確認しておきたい実務上のチェックポイントを解説します。
1.熱中症は5月・6月から注意が必要
熱中症は、屋外作業だけでなく、倉庫、工場、厨房、車両内、空調が十分でない屋内作業などでも発生する可能性があります。
熱中症とは、高温多湿な環境の中で体温調節がうまく働かず、体内に熱がこもることで起こる健康障害です。主な症状には、めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、
吐き気、頭痛、倦怠感、意識障害などがあります。
特に注意したいのが、暑さに身体が慣れていない時期です。5月下旬から6月にかけて急に気温が上がると、体温調節が追いつかず、
WBGT値が比較的低い場合でも体調不良につながることがあります。
そのため、真夏になってから対策を始めるのではなく、早い時期から熱中症予防を進めることが重要です。
2.熱中症対策の鍵となる「暑熱順化」
暑熱順化とは、身体を少しずつ暑さに慣らしていくことです。暑熱順化が進むと、汗をかきやすくなり、体温を調節しやすくなるため、熱中症リスクの低減につながります。
暑熱順化は、一般的に数日から2週間程度かけて段階的に進めることが望ましいとされています。入社直後の従業員、長期休暇明けの従業員、出張や配置転換により暑熱作業に慣れていない従業員については、十分に暑さに慣れていない前提で管理する必要があります。
また、一度暑さに慣れた身体であっても、暑熱環境での作業が一定期間中断されると、順化の効果は失われていきます。連休明けや休職明けは、ベテラン従業員であっても作業負荷を調整し、休憩時間を長めに設定するなどの配慮が必要です。
日常的には、軽い運動や入浴などにより、無理のない範囲で汗をかく習慣をつくることも有効です。
3. 熱中症対策の義務化で企業に求められる対応
2025年6月から、一定の暑熱環境下で作業を行う事業者には、熱中症の重篤化を防ぐための体制整備が義務付けられました。
具体的には、次のような対応が必要です。
・熱中症のおそれがある作業者を早期に把握するための報告体制を整える
・熱中症が疑われる場合の対応手順を作成する
・作業者や関係者に、報告先や対応手順を事前に周知する
・必要に応じて作業から離脱させ、身体を冷却する
・医療機関への搬送や緊急連絡体制を明確にしておく
これらの対応は、実際に作業が始まる前に準備しておく必要があります。特に、屋外作業、構内作業、倉庫作業、設備点検、荷役作業など、暑熱環境が想定される業務では、事前の確認が欠かせません。
単に「水分補給を呼びかける」だけではなく、誰が、誰に、どのように報告し、どのような手順で対応するのかを明確にしておくことが重要です。
4. WBGT値と作業環境の確認
熱中症リスクを判断するうえで重要なのが、WBGT値、いわゆる暑さ指数です。WBGT値は、気温だけでなく、湿度、輻射熱、風の影響などを考慮した指標であり、職場の熱中症リスクを把握するために活用されます。
職場では、WBGT値の把握に加え、作業内容、身体作業強度、服装や保護具の影響なども考慮してリスクを評価することが大切です。
特に、通気性や透湿性の低い作業服、保護具、フード付きの衣類などを着用する場合は、実際の気温やWBGT値以上に身体へ熱がこもる可能性があります。
現場では、次のような点を確認しておきましょう。
・WBGT指数計を用いて作業場所の暑さ指数を確認しているか
・作業時間や休憩時間を適切に設定しているか
・通気性の低い作業服や保護具の影響を考慮しているか
・日陰、休憩場所、冷却設備を確保しているか
・水分、塩分、経口補水液などを利用しやすい環境にしているか
・体調不良者を早期に発見できる声掛け体制があるか
5. 現場で実施したい具体的な予防策
熱中症対策は、現場の実態に合わせて継続的に実施することが重要です。
たとえば、作業開始前の体調確認、WBGT値の測定、こまめな休憩、冷房や送風機の活用、日陰の確保、冷却グッズの配備、水分・塩分補給の声掛けなどが基本的な対策になります。
また、体調不良を本人の自己申告だけに任せるのではなく、周囲の従業員や管理者が「いつもと違う様子」に気づける体制を整えることも大切です。
めまい、ふらつき、受け答えの違和感、大量の発汗、顔色の変化などが見られる場合は、早めに作業を中断し、涼しい場所で休ませる必要があります。
熱中症は、初動対応が遅れると重症化するおそれがあります。現場任せにせず、会社として判断基準と対応手順を整えておくことが求められます。
まとめ
職場の熱中症対策は、従業員個人の注意だけに任せるものではありません。企業が、作業環境の把握、報告体制の整備、対応手順の作成、関係者への周知を行い、仕組みとして対策を整えることが重要です。
特に2026年は、早い時期から暑さへの警戒が必要です。5月・6月の段階から暑熱順化を意識し、WBGT値の確認、休憩体制、緊急時の連絡フロー、従業員教育を見直しておきましょう。
社内制度の設計や就業規則の見直し、社内ルールの整備などについてお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

